A FELICIDADE




 フラットの鍵をかけ、僕たちは歩き出した。真っ青に晴れた空、白い雲と太陽のまぶしさに、思わず腕をかざす。
「ほんとうに、いい天気ね。きっとビーチはどこもすごい人出だわ」
「こんな青い空、なんだか久しぶりに見た気がするよ」
「いつも本に埋もれてばっかりだからよ。ちょうどよかったじゃない」
 そう言いながら、カリンは少し暑いのか、髪に手を差し入れてぱさりと揺らした。きれいに巻かれた髪の上で、金色の夏の光が気ままに踊ってはどこかへ飛んでいく。通りすがりの男性が、目を丸くして抑えめな口笛を吹いたのにもまったく気づかない様子で、少し早足の調子をくずさない。
「仕上げなきゃいけないレポートと論文が三つもあるから、仕方ないさ。――あ、あの辺じゃないかな」
 目立たない古ぼけたビルの入り口には、「カスパー・リンツ個展」の小さなポスターが貼られていた。


「よう、来てくれたのかユリアン!」
 朗々とした声が飛んできた。
「おめでとうございます」
「おう、ありがとう。カリンも一緒か、相変わらず仲のいいことで何よりだな」
「盛況のようですね」
 さほど広くないビルの三階には、けっこうな人数が入っていた。見知った顔は案外少なく、高校生のような若い女の子のグループや、いかにも高そうなスーツに身を包んだ男女などさまざまだ。
「おかげさんでな、昨日からでもう売れたものもあるんだぜ」
「へえ、すごいですね」
「まあ、まだ片手にも足らないほどだけどな」
「すみませんリンツさん、《ハイネセン・アート・ジャーナル》の方が」
「あ、じゃあ私たち、作品を見せていただきますから」
「すまないな、ユリアン、カリン。また見終わったら来てくれ」
 そう言うと、リンツ大佐――もう退役して一年になるけれど――は大股に会場を横切って、訪れた記者とカメラマンとおぼしき人たちとにこやかに会話を交わしていた。

 驚いたことに、絵はとてもオーソドックスで重厚な印象だった。
 昔見せてもらったスケッチブックにあった、ペン一本で人の特徴をコミカルに捕らえたものとはまったく違い、カンバスの上に丹念に少しずつ色を塗り重ねて描かれた女性の横顔は美しいと同時にどこか翳を帯びたものだったし、うち捨てられた廃屋に低い位置から鋭くさしかかる夕陽は、枯草の生い茂る庭と剥げた外壁を残酷なまでに浮きあがらせていた。
 作品は大半が風景画で、題を見るとほとんどが同じ地名だった。聞いたことのない場所だったが、どこまでも続く牧草地に点在する小さな家々とそれらを取りまく空の高さは、僕の前に写真以上の現実感を持って迫ってきた。
 ゆるやかにうねる丘を駆けぬけていく風に襟首を捕らえられ、この小さな絵の中にさらわれてしまうような錯覚。
 なぜかそこから見える星々は、ここハイネセンの夜空から見える美しいきらめきとはまったく違う、荘厳で巨大な、どこかに恐ろしさを秘めたものであるように思えてならなかった。

 ふと我にかえって、カリンの姿を捜す。彼女も何か思うところがあるのか、とある一枚の絵の前を動かずにいる。僕はゆっくりとそちらへ近づいた。
「……その絵が、気に入った?」
 はっとふりむいたカリンの瞳は、いつもよりずっと濃い。彼女は黙ったままうなずいた。
「不思議なの。全然似ていないのに、子供のころ住んでたところを思い出して。ママとあたしと二人で」
「子供のころ?」
 彼女が母親の話をするのは珍しい。一緒に暮らし始めてもう三年になるが、ほとんど聞いたことがない。父親の――シェーンコップ中将のことだ――悪口は今もしょっちゅう耳にするけれど。
「こんな牧場みたいなところじゃなくて、もっとごみごみした下町だったのに、でもなんでだろう、すごく見覚えがある気がするの。なんていうか、あたしが住んでいなくても、きっとママか、ううんママのママかもしれない、とにかく昔ここに住んでた誰かの思い出が、あたしの中に、遺伝子とか何かの中に入ってるみたいな、そんな気が」
 僕はその絵に向かいあった。
 さっき見ていた絵よりもっと小さい、ちょうどレターパッド二枚ほどの大きさだ。やはり題名には同じ地名がついている。コテージのような小さな家と前庭が、月明かりにぼうっと浮かびあがり、色とりどりの花が咲き乱れているのが分かる。そして一頭のガゼルが、その前でゆっくりと微睡んでいた。
「覚えていないくらい小さいころに、こんな家に住んでたんじゃないのかい?」
「ううん」
「じゃあ、絵本かなにかの挿絵でこんなのがあったとか」
「もう、ユリアンったらロマンがないんだから!」
 口をとがらせたカリンの肩を、後ろからだれかがぽんぽんと叩いた。
「お客さん、鑑賞はお静かに願いますよ」

 笑みをたたえたウインク。そばかすの散った細面の顔。
「アッテンボロー提督!」
「こらこら、俺は退役したんだぞ、ユリアン」
「あ、すみません、つい」
「そうよユリアン、アッテンボロー『議員』って呼ばなくちゃ。なんたって今をときめく政治家のセンセイなんだから」
「カリン、おまえいつからそんな毒舌になったんだ? さぞやユリアンを尻に敷きっぱなしなんだろ」
「敷きっぱなしも何も、私の扶養家族ですから。まだ大学院生なんですよ」
「ハイネセン大学の歴史科に行ってるんだってな。キャゼルヌ先輩から時々聞いてるよ」
「キャゼルヌ中――次長にはお世話になりっぱなしです。アルバイトの紹介もしてくださいましたし」
「あの人は昔っから、気に入ったヤツの世話を焼くのが好きだったからなあ」
 そう言いながら、アッテンボロー「議員」はぐるりと会場を見渡した。
「今日はあまり、昔の連中が来ていないんだな。おまえたち、昨日来なくて正解だったよ。取材がうるさくて、ゆっくり旧交も温められやしなかったぜ」
「昨日もいらしたんですか」
「ああ、たまたまぽっかり時間が空いてな」
「嘘をつけ。陳情に来た製薬会社の接待を断るだし、、にしただけだろうが」
「いてっ」
 武勇を誇る「薔薇の騎士」最後の連隊長に頭をはたかれた元同盟軍中将閣下は、頭を押さえて涙目でうずくまった。
「おーまーえー、バカ力で殴るなよ。俺の繊細な頭脳が壊れたら、ハイネセンの未来が真っ暗になっちまうだろうが」
「神経のつなぎどころが変わって、ちょっとはマトモになれるんじゃないか? それとももう二発ほど殴って眠ってくれたほうがハイネセンのためだな、間違いなく」
「おまえの筋肉な頭を殴っとけ、あと十発ほど」
 言いながら立ち上がる。
「久しぶりだな、二人とも」
「提督こそ、お元気そうで」
「だから、『提督』じゃないって」
「でも、じゃあ……」
「『アッテンボローさん』とか、なんか適当でいいよ。あ、『議員』とか『先生』とかはナシだからな。ありゃどう考えても、馬鹿にされてるようにしか聞こえん」
「その通りですね、アッテンボローセンセイ……いてっ!」
「自業自得だ」
 僕とカリンは思わず同時に吹きだした。変わらない。

 戦争が終わり、この地がバーラト自治領として困難なスタートを切ってから五年が過ぎた。僕やカリンは経験も浅く、階級も低かったせいもあり、退役は比較的容易だったが、アッテンボロー提督やキャゼルヌ中将らはそうは行かなかった。
 もはや宇宙の天秤の片方ではなく、ただの辺境の一星系へと滑り落ちてしまった現実を肌身で解せない人々の非難と中傷の矢面に立ちながら、ガタガタになった社会と政府の立て直しに、彼らは文字通り奔走した――せざるを得なかった。帝国に容認された警察力以上の軍備を自らの手で解体し、バーラトの和約で課せられた税金という名の課徴金を回避しつつ社会の立て直しのための資本を得るために妥協と交渉を繰り返す姿は、確かに自由惑星同盟という名の国家に所属していた誰の目から見ても、爽快な光景とは言い難かっただろう。
 だが、誰かがそれをやらねばならなかったのだ。
 この先僕たちが、そして僕たちの子孫が、この星の上で生きていくためには。
 民主共和制のわずかな燠火を、この銀河の、たとえ片すみにだけでも、残しておくためには。
 今では一年に数えるほども会わないが、会えば変わらず陽気な毒舌をふりまくこの人たちのすごさというものを、僕は今になってやっと本当に分かってきたような気がした。


「全部見てくれたんだな。二人とも、ありがとう」
「こちらこそ。すごく、いい絵だと思います。素人の感想ですけど」
「あ、あの、リンツ…さん」
 カリンがためらいがちに口を開いた。
「あの、ここの絵…って、売り物にもなってるんですよね。その……ローンとか、そういうのはダメ、なんですか」
「え」
 カリンは振りむいて、例の月明かりの絵をまっすぐに見つめた。
「あたし、絵のことなんて分からないし、値段も相場も全然知らないんですけど、あの絵が、なんだか……なんていうか、とても懐かしい気持ちになって、それで」
「あの絵がかい?」
 こくりと首を振ったカリンに、実父の元部下は精悍な笑みを見せた。
「もちろん、いいとも。――ユリアン」
「はい?」
「姫さまがご所望だそうだ。請求書はあとでおまえ宛に送ってやるから、持って帰っていいぞ」
「え、ええ!? でも」
「あ、そりゃいいアイデアだ。お前もたまには冴えてるな」
「そんな、ユリアンはまだ学生だし」
「おいおいカリン、おれみたいな駆け出しの描いた絵が、そんな高いわけないだろ。ましてこんな4号ほどの絵、分割なら拍子抜けするような額さ。芸術家ってのは厳しいんだぜ、ここにいらっしゃる『センセイ』とは大違いで」
「一言多いんだお前は。だいたい、俺のどこが高給取りだよ。時給にならしてみろ」
「へーへー。というわけで、カリン、じゃあこの『売約済』の紙、下に貼ってくれるか、そうそう。あとほら、一応画商通さないといけないから、こっちへ来てくれ。――それから、ユリアン」
「え、あ、はい」
「心配しなくても大丈夫だ」彫りの深い、精悍な顔が笑みを浮かべた。
「特別割引にしてやるからさ。どうせあのヤン提督に育てられたお前のことだ、記念日ごとに花を贈ったりなんてしていないんだろ? ちょうどいい罪滅ぼしだぜ」
 僕は少し顔を赤らめて、うなずいた。まったくもってその通りだったから。
「――で、お買い上げいただいた方には、限定特別スペシャルサービスがあってな」
 なぜかアッテンボロー提督が、いたずらっぽい表情をして言った。
「あ、お前が言うか」
「スペシャルサービス、ですか?」
「そこにドアがあるだろ」
指さされた部屋のすみには、確かにドアがあった。非常口かなにかと思っていて、気にも止めていなかったのだけれど。
「お買い上げ下さった方のうち、一定の条件を満たした人物だけが、この部屋に入れるのさ」
「え、でも、この絵はカリンの」
「カリンも手続きが終わったら後でな。部屋が狭いから、一人ずつしか入れないんだ。だからお前、先に行っとけ」
「あ、はい。……じゃあ」
「行ってこい、ユリアン」
 アッテンボロー「提督」は、めったに見せない深く穏やかな笑みを浮かべると、リンツ「大佐」と静かに視線を交わして頷いた。



 窓のない小さな部屋。もとは物置かなにかだったのだろうか。だがドアを後手で閉めたとたん、僕はその場に立ちすくんだ。

 目の前に絵があった。額縁もついていない、黒一色のデッサン画。 
 そこにいるのは、黒ベレーを片手でくしゃくしゃにしたまま、穏やかな午睡に身をゆだねている、懐かしい姿のヤン提督だった。

 あの家に引き取られてから、何度となく見た姿。もう二度と見ることがかなわなくなっても、何度も夢の中に現れたその姿。
 すこし濃いめに入れた紅茶を用意して、二、三度呼びかけると、低い声とともに身をよじってやっとのことで目を開ける。でも勤務中には、紅茶がすっかりさめてしまうまで起きなかったことはなく、もしかしたら眠ってなどいなくて、ただ僕たちの及びもつかないような、深い思考に沈潜していたのかもしれない、そう思うことも何度かあった。

 ああ。
 もし今、「二時間寝るから、何があっても起こさないでくれよ」と言って下さったなら、たとえ帝国軍の一個小隊がトマホークで襲ってこようとも、僕は絶対にあなたの言いつけを守ります。
 ヤン提督。
 あなたのその寝顔が、どれだけ僕たちに安心を与えていてくれていたことか、あなた自身は果たしてご存知でしたか。
 あなたが生きていてくれるなら、民主主義なんてどうでもいい、と涙ながらに言った女性は、今あなたの意思を伝えることに生活のすべてを注いでいます。
 人は主義や思想のために戦うんじゃない、と断言したあなたの親しい後輩は、その思想を体現すべく、軍服を脱いで宙域を日夜飛び回っています。
 そして僕は――あなたがあれほどいやがった軍人になったのに、今度はとっとと退役して、あなたの心にいつもあった歴史というものを学び始めているところです。

 ヤン提督。
 だから、どうか起きて下さい。
 いつものように。猫のようにうーんと伸びをして。
 「みんな、何をそんなにキリキリと頑張っているんだい? みんながそんなに勤勉だったとは、今の今まで知らなかったなあ、わたしは」って、言ってください。
 言ってくだされば、僕は。あの人たちは。

 あなたが望むなら、僕たちは嬉々として星を砕き、永遠の戦いに身を投じ、それを絶対の幸福として死んでいくことができたでしょう。そしてあなたが望まないならば、僕らはたとえ宇宙の法則に逆らっても、それを貫いたことでしょう。

 そこまでを思いながら、僕はもう一度この絵を見つめ、そして静かに首を振った。


 けれどあなたが、目をさますことは決してない。二度と。


 そして僕たちは、重力と時間に囚われたこの地上で、遅々とした歩みを続けていくしかないのです。それが僕たち、生き残った者に課せられたただ一つの務めだから。
 ヤン提督。
 今はただ、あなたという人の大きさをあらためて感じるばかりです。あなたに会えて、あなたと同じ時間を共有することができた――その奇跡に、今の僕たちはただ感謝します。

 あなたは永遠に去り、ひとつの時代がそのとき幕を下ろしたのですから。




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 ビルを出ると、陽もすっかり落ちた夏の空は急速に闇を深めはじめていた。
「ねえ、ユリアン」
「ん?」
「ありがとう」
「何が」
「絵のこと」
「ああ、いいんだ。本当に、高くなかったし」
 きっと、うんと値段を下げてくれたのに違いない、と僕は思った。いくらなんでもプロの絵が、僕のバイト3日分の給料で買える、なんてことはありえないだろう。
「……ねえ」
 カリンは暮れていく空を見ながらゆっくりと言った。
「あたしたち、3年も一緒に暮らしてたけど、もしかしたらお互いのことをよく見ていなかったのかもしれない、って今日思ったの。……あの絵を、見てから」
「……そうかも、しれないな」
 カリンが絵が好きだなんて、思いもしなかった。亡くなったという母親が、どんな人だったか、聞きもしなかった。いつも気丈で、きりっと前を向いている姿は好きだけれど、考えてみれば、僕は彼女の他の姿を知ろうとしていたのだろうか。
 唐突にあの絵が目の前によみがえった。イゼルローン要塞の中央司令室か、第13艦隊のブリッジにいれば、誰でも一度は目にしただろう光景。ある人は笑い、ある人はため息をつき、ある人は害のない悪戯を試みる。
 それは平和でほほえましい光景だった。けれど僕は、本当に分かっていたのだろうか。

 あの戦いのさなか、ヤン提督の心をよぎっていたものを。冗談を飛ばしていつも明るく笑っていたアッテンボロー提督やシェーンコップ中将たちの、ほんとうの思いを。
 部下を死地へと追いやり、その血で勝利を贖うことを課せられていた者たちの心を。


「……ユリアン? どうしたの?」
 カリンに顔をのぞきこまれて、はっとした。
「い、いや」
「あのね、今日もうひとつ思ったの」
「え?」
「ユリアンのこと、これからいっぱい聞かせて」
 カリンは両腕を伸ばして、空に浮かぶ何かをつかもうとするような仕草を見せた。
「ご両親のことや、学校のことや、ヤン提督と知り合ってからのことや、いろんなこといっぱい。ユリアンが今まで何を見て、何を考えてきたのか、あたし、知りたいから」
「カリン……」
「もちろん、一番重要なのは今のユリアンよ。だけど、ほら、言うでしょう『敵を知れば百戦危うからず』って」
「じゃあ、ぼくは敵?」
 思わずくすりと笑いが込み上げた。
 そうだ。知らないならば、これから知ればいい。知ることができるのだから。
 カリン、きみに聞いてみたいことがたくさんあるんだ。今ここに、こうして凛と立っているきみが、これまで歩んできた軌跡と思いを。そして、僕にもたくさんある。


 きみだからこそ、聞いてほしい、話したいと思うたくさんのことが。


「そうかもしれない」
 カリンもつられたように、くすりと笑った。
「妙に鋭かったり、いやに深刻ぶったり、ちょっと厄介な敵だけどね、でも」
「――でも、好きだよ」


 続きを聞くのがちょっとこわいから、と自分に言い訳しながら、僕は彼女の唇をそっとふさいだ。






FIN.








【作者さまからのコメント】
 すこし詰め込みすぎた感もありますが、ユリアン、カリン、リンツ、アッテンのそれぞれの戦後です。
 ヤンの家に引き取られたときから(いやそのもっと前から)、年齢以上の分別を常に要求され、それに応えてきたユリアン。努力を重ねた結果ではあるけれど、なんでもこなしてしまえるタイプの彼にとり、ヤンの死後わずか18才にして革命軍司令官の名前を着せられたことは、やはりある意味不幸だったと言えるでしょう。そして、その経歴が皮肉なことに、戦後はある種の障碍になったということは、容易にあり得る話で。
 カリンとの恋愛が続いていくのかも正直不透明ですが、市井で新しいスタートを切るには、彼女は頼もしいパートナーだとも思います。
 題名の"A Felicidade"は「幸せ」という意味のポルトガル(ブラジル)語で、有名なボサノバ曲の題名でもあります。「幸せは花びらに宿る 夜露のしずくのようなもの」と、幸せのはかなさが歌われますが、やはりはかないからこそ幸せは美しくいとおしいものなのかもしれません。
 リンツの絵のイメージは適当ですが、カリンが心惹かれた絵のモチーフはメンデルスゾーンの「歌の翼に(Auf Flugeln des Gesanges)」から拝借しています。ちょっとシャガールみたいな感じかな。でも他の絵はもっと印象派ぽいというか、シスレーとワイエスを混ぜた感じ(どんなんや;)の油絵を想像しています。



【管理人コメント】
遊佐薫さんの御殿で10000HITのニアピンを踏ませて頂き、頂戴した作品です。
原作中では、リンツがヤンについての想いを明確に語る場面に思い当たらないのですが、この絵からはきっとイレギュラーズの一員として抱いていた敬愛や思慕などが溢れ出さんばかりだったのではないかと。そんな想いを共有できる者だけが見ることを許されたある意味リンツの心情の告白だったのではないかと、胸が熱くなる思いでした。現実でも帰還兵の心のケアなどが問題になっていますが、生き残り組の彼らがそれぞれ生きる意味や心の支えを見出し、この作品のように幸福な新しい人生に向って踏み出して欲しい。物言わぬ絵画だけれど、生前のままの姿のヤンは、そんな彼らを励まし見守っているような気がします。
薫さんの作品は、どれも考えさせられるというか大きな問いを投げかけてくるようで、その深みと厚みがとっても好きなのですが、この作品を頂いて、作中の誰よりも私が幸せです(笑) 薫さん、本当に素敵な作品をありがとうございました!!




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